糖尿病・高血圧症・高脂血症などの生活習慣病と消化器系疾患を中心とした診療を行っております。

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成人病News

第50回を迎えた「日本成人病(生活習慣病)学会」と「糖尿病学の進歩」

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

 毎年、お正月早々に開催される学会の1つに日本成人病(生活習慣病)学会があります。 2016年1月に開催された第50回日本成人病(生活習慣病)学会は、東京医科大学の小田原雅人教授が主宰され、 メインテーマは「生活習慣病、一歩先の未来へ Your action, our future 」でした。 小田原教授のご専門である糖尿病を中心として、高血圧、脂質異常症、肥満、認知症、さらに癌など重要な成人病が幅広くとり上げられ、多くの参加者を得て、盛会裡に終了しました。
 第50回日本成人病学会では、第50回を記念して学会の中で、記念式典と記念講演会を開催させていただきました。 記念式典では日本医師会長の横倉義武先生(代:今村 聡副会長)、日本医学会会長の高久史麿先生、ならびに厚生労働省健康局局長の福島靖正先生からそれぞれご挨拶をいただきました。 また、記念講演会では、日本成人病学会の名誉理事長である跡見 裕先生から、「日本成人病(生活習慣病)学会50回の歩み」と題する特別講演を拝聴しました。
 「糖尿病学の進歩」は、毎年早春のこの時期に開催される日本糖尿病学会の教育集会です。 今年は「糖尿病学の進歩」も第50回を迎え、東京女子医科大学糖尿病センターの内潟安子教授が世話人を務められ、素晴らしい「糖尿病学の進歩」を学ぶことができました。
 これから3月〜5月にかけては日本内科学会、日本外科学会、日本循環器学会、日本消化器病学会、日本糖尿病学会など大きな学会が相次いで開催されます。 成人病研究所の医師、メディカルスタッフもこれらの学会に積極的に参加し、新しい研究の成果を吸収するとともに、成人病研究所の診療と研究に関してその成果を広く発表してまいります。

 
 

糖尿病と母子手帳

部長・糖尿病代謝科 田原 たづ

生活習慣病と胎内環境

 糖尿病を含む生活習慣病、および肥満は世界的な問題で、WHOのデータによると、北米や中東で肥満が著明ですが、日本でも増加傾向にあると言われています。 生活習慣病の治療の基本は食事と運動です。過食による肥満や運動不足は、生活習慣病の原因の一つと考えられており、これらを改善することは病気の治療に大きな意味を持っています。 もって生まれた素質を表す遺伝因子に対して、このような肥満や運動不足は環境因子とよばれます。 生活習慣病については、これまで成人後の環境因子について述べられることが多かったのですが、最近は生まれるよりもっと以前の環境も重要だということが言われ始め、注目を集めています。
 胎児、つまり母親のおなかの中にいる赤ん坊の時からすでに、その子が将来なりやすい疾患が決まる部分があるということがわかってきたのです。 古くは第二次大戦中にオランダで起こった、「オランダの冬の飢餓」が有名です。多くの人々が餓死したのですが、この時期に妊娠中だった女性から生まれた子どもを調査すると、 成長後に虚血性心疾患、糖尿病、高血圧症、メタボリック症候群、脳梗塞などを発症したものが多かったといわれています。 その後は各国から低出生体重児と生活習慣病との関連が多数発表されてきました。胎児期の環境すなわち胎内環境が、子どもの成長後の疾患について非常に大きな影響を持っていると考えられているのです。
 一方、低栄養と反対に母体の過体重・肥満も問題とされています。母体がもともと肥満である場合や、妊娠経過中に体重増加が大きい場合、妊娠糖尿病の場合は、子どもは過体重となりやすく、 糖尿病、肥満、心疾患のリスクが高まると報告されています。

母子手帳の活用

 我々の検討では、糖尿病の子という限られた対象ではありますが、妊娠時の母体体重増加が少ないと子のBMIが上昇し、 また妊娠前の母体体重が少ないと子どもの現在のインスリン抵抗性を示すHOMA-IRが高値を示していました。 胎内環境と出生後の児の生活習慣病についての我が国での報告はまだ少なく、規模も小さいものが多く、今後大規模な疫学調査が行われることが望ましいと考えられます。
 母子手帳は、正式には母子健康手帳といい、世界的にみても周産期の母子の状態を詳細に記録する珍しいものです。 1942年に妊産婦手帳として始まり、1947年児童福祉法が制定され、母子手帳となりました。母子手帳には、分娩の記録だけでなく、 妊婦の健康状態、胎児の発育、出産後の乳幼児の成長の過程を記入することができるようになっています。これらのデータを解析することで、 お子さんたちの将来の生活習慣病のなりやすさの一部を解明できるかもしれません。

 
 

当院の療養指導と教育入院のすすめ

看護科・看護師長 松田 由維

当院の糖尿病療養指導

 当院では外来、入院ともに糖尿病認定看護師、CDEJ(Certified Diabetes Educator of Japan:日本糖尿病療養指導士)を中心に療養指導を積極的に行っています。
 療養指導内容としては、糖尿病の基本的知識をお話しする新患指導、インスリン自己注射指導、自己血糖測定指導、フットケアについてなど多岐にわたります。 他にも療養生活で困っていることやうまくいかないことなどの相談も受けています。初診で来られた方にはまず、医師の診察、看護師による療養指導、栄養士による栄養指導を行います。 療養指導は基本2回で終了しますが、患者さんからの希望や医療従事者の判断により、必要な方には3回、4回と行います。
 1回目の指導内容は生活習慣についてお聞きし、その後「糖尿病とは」「糖尿病の三大合併症について」「血糖コントロールの指標」「HbA1cとは」「食事、運動療法について」など糖尿病療養に必要な基本的なお話しをします。 その後、生活改善に関する行動目標を患者さん自身に設定してもらいます。2回目の指導内容は前回の目標の評価と修正を行います。 その後糖尿病の足病変について、フットケアの方法、実際に足病変がないか確認を行います。もしもそこで異常があれば、足の手入れ外来や当院の皮膚科を受診するなどの対応をしています。

教育入院のすすめ

 入院経験のない多くの方は、教育入院と聞いてもイメージしにくいと思います。あるいは、入院とは一日中ベッドで安静にしている、というようなイメージをお持ちの方も多いかもしれません。 しかし当院の教育入院は、一言でいうと「合宿」のようなイメージの入院です。
 教育入院期間は2週間が基本ですが、時間が取れない場合は1週間や10日にするなど調整も可能です。 その間に、糖尿病の合併症に関する検査や、毎食前と就寝前に血糖測定を行います。 また、毎日午前・午後1時間ずつの糖尿病教室と、毎食事前には栄養士からこれから食べる献立の説明(食品エネルギー単位数、栄養素のバランス、調理法、調味料など)があります。 それ以外の空いている時間は運動療法を行ってもらいます。
 入院療養指導は、内容こそ外来のものと変わりませんが、患者さんの病室のベッドサイドで、リラックスしてじっくりお話しすることができるという利点があります。 そのことによって糖尿病の知識がより深まり、今後ご自身の療養生活をどのように過ごすかを考える機会にもなります。さらに、退院前にはご自身で生活の目標を考えていただきます。 目標は大きなものではなく、実現可能な具体的な目標を立ててもらいます。その時看護師は答えを教えるのではなく、患者さん自身が目標を立てられるようお手伝いをします。 当院通院中の方であれば、その後も外来療養指導で継続的に指導を受けることが可能です。
 また、糖尿病と診断されたとき、「なぜ、私だけが」といった思いを多くの方が経験していると思います。 そのような人にとって、教育入院は同じ糖尿病をもつ人との交流の場となり、糖尿病療養のモチベーションを上げる機会にもなっています。

 今までは「教育」という言葉から、医療従事者が教えて患者さんはそれを聞いて勉強するものと捉えられていました。 しかし現在は受動的な考え方ではなく、患者さんが自ら学ぶことが重要と考えられています。私たちは教育・指導ではなく、患者さんを「支援」することが重要と考え、日々実践しています。