概要
当院は消化器疾患の早期発見、治療に力を入れております。
肝臓、消化管(食道・胃・大腸)、胆管及び膵臓と、消化器内科の診療は広範囲の臓器にわたりますが、東京大学消化器内科を始めとする関連病院の各専門グループより協力を得、全分野をカバーする体制を取っております。消化器内科の診療には上下部内視鏡検査(胃・大腸カメラ)、腹部超音波検査、CT検査といった多彩な画像検査が必須ですが、これらの検査は毎日実施しております(緊急時を除き、原則予約制)。
胸焼けや腹痛、下痢や便秘といった消化器症状は、器質的な消化器疾患が原因である場合と、そうではない場合(機能性疾患)があります。いずれの場合においても、速やかな診断・治療が必要です。
また、無症状であっても健康診断の便潜血検査や胃バリウム検査、血液検査(肝機能など)で異常を指摘された場合には、下記にお示しするような消化器疾患の発見の端緒になることが多いため、当科外来に是非一度、御相談ください。
主な診療対象疾患
当科で対応している代表的な消化器疾患についてご紹介いたします。
1.消化器癌
食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、胆管癌、膵癌と、消化器内科がカバーする悪性疾患は幅広く、またそれぞれの分野における治療の進歩はまさに「日進月歩」です。
特に食道癌や胃癌、大腸癌といった消化管癌は内視鏡治療による早期治療が可能であった方と、発見が遅れ進行してしまった方とでは治療成績にも大きな開きがあるため、これらの癌の危険因子(喫煙や飲酒、ピロリ菌感染や家族歴など)をお持ちの患者様には少しでも早期発見が出来るよう、積極的に内視鏡検査をお勧めしております。
また、難治癌と言われる肝癌、胆管癌、膵癌においても治療成績は少しずつ向上しており、患者様の状況に応じ最善の医療が受けられるよう、近隣の高次医療機関と連携して対応しております。
2.萎縮性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)
内視鏡検査で萎縮性胃炎が確認された方には、Helicobacter pylori(ピロリ菌)の検査を行い、検査で陽性であった方には除菌治療をお薦めしております。ピロリ菌感染が胃癌の危険因子になることが知られており、除菌することでその発癌リスクを低減することが出来るからです。なお、一度除菌すれば発癌しない、というわけではなく、あくまで「リスクが減る」というだけですから、除菌後も胃カメラを定期的にフォローアップし、胃癌の早期発見に努めております。
3.脂肪肝
健康診断等で指摘されることの多い脂肪肝ですが、アルコールが原因である場合(アルコール性)とそうでない場合(非アルコール性)に大別されます。後者の多くが「単純性脂肪肝」といって良性の経過をたどりますが、中には肝硬変や肝癌に進展する可能性を有する場合もあり、そのようなケースを非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼んで区別しています。「脂肪肝なんて」と軽く考えていると、実はNASHだった、というケースが残念ながらしばしば見受けられます。特に血液検査で肝障害も同時に指摘されているような方は、是非とも一度、当科外来へご相談ください。
4.膵嚢胞
近年増加傾向にある膵癌の危険因子として注目されている疾患が膵嚢胞です。但し、嚢胞の種類(腫瘍性か非腫瘍性か)や大きさ、形態等によってもそのリスク度合いは異なり、一概には言えません。場合によっては超音波内視鏡検査(EUS)等、病状の正確な把握のため専門性の高い検査が必要になることもあります。また、病状の進展具合によっては手術が必要になる場合もあります。当院では定期的な経過観察を行い、異常を発見した場合には主に東大消化器内科胆膵専門グループと連携して対応しております。
5.機能性胃腸疾患(機能性ディスペプシア・過敏性腸症候群)
「食べた後にお腹が張る」「下痢と便秘を繰り返す」等の消化器症状があるにも関わらず、検査を行っても器質的な異常の無い疾患群です。これは「消化管機能のバランスが悪い状態」で、心理社会的な因子が関係し、近年患者数が増加傾向にあります。検査で目立った異常に乏しいため、以前はあまり積極的に介入されることもありませんでしたが、最近では有効な薬剤も開発されつつあり、症状の程度や頻度に応じて使用され、改善が期待できるようになってきました。「なんとなくお腹が調子悪い」といった漠然とした症状でも構いません。当科外来へ是非、一度、御相談ください。
主な検査
1.内視鏡検査(胃・大腸カメラ)
口または鼻からファイバースコープを入れて食道・胃・十二指腸の検査をする上部消化管内視鏡(いわゆる「胃カメラ」)と、肛門から入れて大腸を観察する下部消化管内視鏡(大腸カメラ)を行っております。
上部消化管内視鏡は口からだけではなく、鼻からファイバー入れて行う「経鼻内視鏡」も積極的に行っております。経鼻内視鏡は経口のものと比べて、経が細いため苦痛が少なく、検査中も医師と会話ができるといった特徴があります。今まで胃カメラを敬遠されていた方も是非一度御相談ください。
下部消化管内視鏡は、ご高齢の方など必要に応じ、ご入院のうえでの検査も行っております。ポリープが見つかった場合、可能なものはその場で内視鏡的に切除します(内視鏡的粘膜切除術)。切除した検体に悪性の所見があるかどうかは、専門の医師により厳密に判定されます。また内視鏡に対してどうしても恐怖心のある方や苦痛の強い方に対しては、鎮静剤を併用することで、少しでも楽に検査を受けていただけるように対応しております。
2.腹部超音波検査(腹部エコー検査)
内視鏡検査が消化管の中を観察する検査であるのに対し、腹部超音波検査(腹部エコー検査)は消化管の周囲にある肝臓や胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓などの臓器を観察する検査です。検査はお腹にゼリーを塗るだけで、痛みも無く行うことができます。
検査日程
検査はすべて、外来にて医師と相談のうえでご予約していただきます。お電話のみによるご予約、ご来院当日の検査は受け付けておりませんのでご了承ください。
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
上部内視鏡検査 | ● | ● | ● | ● | ● |
下部内視鏡検査 | ● | ● | ● | ● | |
腹部超音波検査 | ● | ● *1 |
● | ● |
● |
心臓超音波検査 | ● | ● | ● | ||
頸動脈超音波検査 | ● | ● | ● | ● | |
甲状腺超音波検査 | ● | ||||
末梢神経伝導検査 | ● | ● | ● | ||
ホルター心電図検査 | ● | ● | ● | ● | ● |
・水曜日の下部内視鏡検査(赤色の●印)は女性医師が担当しています。
*1は下記の医師が実施。●は技師が実施。
*1 森秀明先生(杏林大学医学教育学特任教授)
標準心電図検査、運動心電図検査、脈波・足関節上腕血圧比(ABI)・足趾上腕血圧比(TBI)、CVR-R検査、睡眠時無呼吸検査は随時行っています。
消化器内科(2024年6月1日現在)
医師名 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |||||
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午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | 午前 | 午後 | |
藤原 弘明 | ● | |||||||||
新井 絢也 | ● | |||||||||
金井 祥子 | ● 2.4 |
● | ||||||||
前田 愼 | ● 1.3.5 |
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赤沼 真夫 | ● 2.4 |
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榎奥 健一郎 | ● |
※表中の数字はその月の第○週目を表します。
- 藤原 弘明 (消化器内科部長) 詳しくみる
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