vol.009 2017年 1・2月
糖尿病の合併症の早期発見に役立つ検査のすすめ |
(公財)朝日生命成人病研究所附属医院 所長・院長 岩本 安彦 |
ご挨拶 明けましておめでとうございます。2017年の年頭にあたってひと言ご挨拶申しあげます。今年のお正月は例年になく穏やかで暖かい天候に恵まれました。今年は自然災害などに苦しむことがない平穏な年となりますように、心からお祈り申しあげます。 日本成人病 (生活習慣病) 学会のご案内 第51回 日本成人病 (生活習慣病) 学会が1月14日 (土) 、15日 (日) の2日間、都市センターホテルで滝川 一 先生 (帝京大学医学部長、内科学講座主任教授) の会長のもと開催されます。 |
糖尿病合併症に関する観察研究 “Asahi Study” |
診療部長・糖尿病代謝科 吉田 洋子 |
Asahi Study の背景 近年の糖尿病の薬物療法では、SGLT2阻害薬に加え、週1回のDPP4阻害薬やGLP-1製剤、インスリンのバイオシミラー、持効型インスリンと追加インスリンの配合薬が登場しました。 Asahi Study の目標このような状況の中で糖尿病患者さんが合併症を予防し、健康な生活を保つには糖尿病のコントロールと合併症を常に評価して、時代に合った適切な評価と治療方針を立てる必要があります。このたび当院の糖尿病代謝科の医師が中心になって Asahi Study を計画しました。 Asahi Study は、当院に通っている2,000人の患者さんの生活習慣や合併症、血液検査などの情報をデータベース化し、合併症の実態と治療状況を調べ、今後の糖尿病治療に役立てることを目的とする調査です。この調査のために新たな投薬を受けることはありませんし、試験薬を飲んでいただくこともありません。 Asahi Study で行う検査 参加して頂ける患者さんには、年1回の空腹時採血と、合併症に関する検査を受けて頂くようお願いしています。 患者さんとともに医療が進歩したとはいえ、今も糖尿病は管理をしていく疾患です。研究というとルールが多く患者さん優先ではないものというイメージがありますが、 Asahi Study は患者さん自身にあった治療法を探し、それぞれのコントロール目標に向かって治療を続けるもので、本来の糖尿病治療と変わることはありません。一人でも多くの方にご参加いただいくことで、より信頼性の高い研究にすることができます。当院ならではのこの臨床研究をともに前進させてみませんか。 |
酸化ストレス障害を媒介する生理活性物質ORAIP<続報> |
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循環器内科部長 世古 義規 |
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酸素とORAIP―両刃の剣 一昨年我々は「細胞が虚血再灌流のような酸化ストレスにさらされると、細胞から分泌型のeIF5Aというタンパクが分泌されて細胞膜上の受容体に結合してアポトーシスを誘導する」ことを明らかにし、この分泌型eIF5Aを新規の生理活性物質としてORAIPと命名したことを報告しました。 ORAIPが導く抗癌療法と健康長寿への道 このように見てくると生体の酸化ストレス応答という根源的な生命現象を媒介する唯一のキーファクターであるORAIPは、免疫系のように生体機構の一つの柱を担っているのではないかと思われます。ORAIPは酸化ストレスのない正常の状態でもわずかながら分泌されており、そのことに生理的な意義があるのか、どのような役割を果たしているのかは不明です。
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