成人病News

vol.003 2016年 1・2月

新しい年を迎えて

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

体重減少(減量)を新年の目標に

 新年おめでとうございます。朝日生命成人病研究所・附属医院の職員を代表して、新年のご挨拶を申しあげます。当院には糖尿病、肥満症、脂質異常症、高血圧、狭心症、心不全、肝臓病、胃腸疾患、慢性腎臓病など成人病(生活習慣病)に罹患している多くの患者さんが通院しています。
 患者さんの診療録(カルテ)の病名をみると、糖尿病(2型)、肥満症、高血圧、脂質異常症が併記されている方が大変に多く、これらの疾患がいかに同じ患者さんに集積しているかがうかがわれます。
 患者さんには日頃の診療の中で、体重を減らすことの重要性を繰り返しお伝えしていますが、1年の始めにあたって、あらためて減量を新年の目標としていただければと思います。患者さんによっては肥満度が著しく高く、適正な体重と実際の体重にかなりの差がある方も少なくないと思いますが、すぐに標準体重を目指すのではなく、当面、現在の体重の3%~5%減を目標とされるのが現実的かつ有効な目標の設定かと思います。

糖尿病療養指導鈴木万平賞 受賞の光栄に浴して

 このたび公益財団法人鈴木万平糖尿病財団より、「平成28年度(第9回)糖尿病療養指導鈴木万平賞」が朝日生命成人病研究所(附属医院)に授与されることが決定し、同財団のホームページで公表されました。
 朝日生命成人病研究所附属医院の受賞は、「体系的な糖尿病療養指導体制の確立と先駆的な試みの実践」が業績として認められたものであり、当褒賞創設以来9回目にして初めて「施設」としての受賞となります。授与式は2016年10月14日に開催されますが、当院の職員にとっては大変名誉なことであります。鈴木万平糖尿病財団、審査委員、ご推薦いただきました皆様に厚く御礼申しあげます。
 「糖尿病療養指導鈴木万平賞」受賞を励みに、今後ともスタッフ一同、糖尿病患者さんの療養指導に一層力を注いでまいりますので、よろしくご支援のほどお願い申しあげます。

第50回日本成人病(生活習慣病)学会に参集を

 1970年に第1回日本成人病学会が開催されて本年で第50回を迎えます。第50回の会長は、東京医科大学の小田原雅人教授が務められ、「生活習慣病,一歩先の未来へ Your action, our future」をテーマに1月16日(土)、17日(日)の2日間、都市センターホテル(東京)にて開催されます。
 日本成人病(生活習慣病)学会の特徴は、内科系と外科系の医師とメディカルスタッフが一堂に会し、成人病(生活習慣病)に関する最新の知見を共有できることです。
 第50回の日本成人病(生活習慣病)学会では、「生活習慣病としての糖尿病」と題する会長講演、「インスリン作用と糖尿病」と題する特別講演(春日雅人先生)、「健康寿命を延ばすために」、「肥満症の内科・外科治療」、「職域と糖尿病」の3題のシンポジウム、さらに「ウィルス肝炎治療の最前線」「食道裂孔ヘルニアに対する外科治療」の2題の教育講演が行われます。その他、“Meet the Expert”や多くの共催セミナーが予定されており、糖尿病の最新の治療の有用性や安全性に関するデータが報告されます。
 また、学会2日目(17日)の午後には、第50回を記念して、記念式典と記念講演会を開催いたしますが学会のネームカードで入場できますので、多くの皆様の参加をお待ちしています。
 (以上、日本成人病(生活習慣病)学会理事長として宣伝させていただきました。)

糖尿病治療の新薬と治験

治験部長・糖尿病代謝科 大西 由希子

糖尿病薬の現状と治験

 糖尿病の治療薬は毎年のように新薬が登場します。低血糖をおこしにくいインスリン分泌促進薬のDPP-4阻害薬、インスリン分泌促進とともに食欲抑制をすることで肥満2型糖尿病患者への効果が期待されるGLP-1受容体作動薬、尿糖の排泄を促進することで血糖と体重を下げる効果を期待されるSGLT2阻害薬。インスリンについても、バイオシミラーといういわば経口薬でいうジェネリックのような価格の安い後発品が登場する一方、従来のインスリンの3倍濃縮タイプや、超速効型と持効型インスリンを混合したインスリンも発売されました。毎日注射していたGLP-1受容体作動薬を一週間に一回注射すればよい、という製品も登場しています。
 新薬の開発、製造承認取得、そして発売に治験のデータは欠かせません。当院では、たくさんのボランティアの患者さんたちにご協力をいただきながら治験を行っています。そのおかげもあって、新薬発売のときにはすでに医師をはじめとするスタッフ一同がそれぞれの薬の特性について理解し、ある程度経験をしているため、当院ではスムーズに新薬の活用ができております。

映画とは異なる治験の実状

 私が初めて治験を意識したのは医師になる前。ハリソンフォード主演の「逃亡者」という映画(1993年公開)を見たときです。これは治験のマイナスイメージの象徴的な映画かもしれません。
 ハリソンフォードが演じる医師キンブルが妻殺害の濡れ衣で死刑囚とされますが、逃亡しながら誰が妻を殺したのか、を追及していきます。すると、大手製薬会社の新薬の治験の際に重大な副作用を隠蔽して、富と名声を得ようとする医師ニコルズ(キンブルの上司かつ親友)が真犯人と判明します。新薬の重大な副作用に問題があることを指摘したキンブルを殺害する計画だったのに、妻を殺害してしまった…。
 これから観ようという方には興をそいでしまうかもしれませんが、この映画はあくまで、20年以上前のエンターテインメントとしてのフィクションにすぎないと、申しあげなくてはなりません。今の新薬開発では、この映画のような副作用の隠蔽はおきえません。
 現在の治験は、倫理性・科学性・信頼性の確保を目的とした新GCP (Good Clinical Practice)にもとづいた体制になっています。また、治験実施期間中に有害事象が生じるとただちに報告されるとともに、倫理委員会を毎月開催して、治験継続の可否を審議しています。新薬は、このような有効性・安全性の厳しいハードルを乗り越えて登場してくるのです。もちろん、多額の投資をしたものの安全性をクリアできずに、開発中止される薬も少なくありません。
 当院では今も多くの治験が進行中であり、これからも当分糖尿病新薬は登場し続けることでしょう。古い薬の良さも十分に生かしながら、新薬を安全に活用していくべく、スタッフ一同気持ちを引き締めて日々切磋琢磨しております。

糖尿病食は健康食

栄養管理室・チーフ 藤原 江美

「驚きの糖尿病食」!?

 みなさま、こんにちは。「糖尿病」と聞くと食事についての不安を持たれる方は多いと思います。当院でも、初めて栄養相談に来られた方は「あ~あ、好きなものはもう食べられないんだな~」とため息をつく方は多いです。でも、教育入院で実際の糖尿病食を目の当たりにすると、「もっと質素な食事だと思っていた」「(イメージと違うから)こんなに食べていいの?」と驚かれます。
 このように、「糖尿病食」に対するイメージはあまりいいものではないようですが、実際の糖尿病食を少しずつ理解していくと、イメージとは違うものになってくるようです。
 <当院の入院食の写真はこちら>

糖尿病患者さんのための食事とは

 ①適正なエネルギー量を守る
 【エネルギー量(カロリー)】の情報は世の中にあふれています。お店のメニューや食品の栄養成分表示を見れば書かれているのでイメージしやすいかと思います。そこに【栄養バランス】を考慮できれば、糖尿病の治療に役立つ食事になります。

 ②栄養バランスをよくする
 栄養バランスがいいかどうかを見極めるために、『糖尿病食事療法のための食品交換表』(以下、「食品交換表」)という本を使います。この食品交換表は、同じカロリー(80kcal;1単位)分を食べるとしたらそれに含まれる栄養素の配分が似ているものどうしを6つのグループに分けています。なので、同じグループの中でカロリーを同じだけ摂るなら、同じくらいの栄養素を摂取できます。それぞれのグループに割り当てられるカロリー(単位)は栄養バランスを考慮して栄養士が配分します。それに基づいて食べていただければ、栄養バランスのよい食事になります。文字で説明するのは難しいので、ぜひ病院で栄養士に聞いていただければと思います。

 ③規則正しい食事習慣を継続する。
 やせたいと思って食事の回数を減らそうと考える人は多い印象があります。しかし、食べたり食べなかったりすると逆に太りやすい体質になってきてしまいます。食事は必要な時に必要なもの(栄養素)を必要な分(量)だけ摂ることが鉄則です!

 糖尿病があってもなくても食事は毎日するものです。【糖尿病食】として紹介した上記のポイントは、糖尿病の方にとっては治療になります。糖尿病予備軍の方、あるいは糖尿病にはなっていない方にとっては糖尿病の予防につながります。食事は糖尿病になってから取り組めばいいものではありません。【糖尿病食】は特別なものではなく【健康食】なのです。
 まずは、自分で取り組めることを見つけてください。1日1個、体にいいことに取り組むと、1ヵ月で30個、3か月には100個近く積み重なります。がんばりすぎなくていいです。自分にとってハードルが低いことなら取り組めると思います。継続は力なり!良い食事の習慣は、必ず自分の体に帰ってきます。

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