成人病News

vol.011 2017年 5・6月

朝日生命成人病研究所の医師・医療スタッフが総力を結集した
『これが知りたかった!糖尿病診療・療養指導Q&A』
近日出版

(公財)朝日生命成人病研究所附属医院

所長・院長 岩本 安彦

本書出版のきっかけ

 朝日生命成人病研究所は1960年の開設以来、成人病とくに糖尿病の診療と研究に力を注いできました。昨年10月、長年にわたる糖尿病診療と療養指導への貢献が高く評価され、「第9回糖尿病療養指導 鈴木万平賞」受賞の栄誉に浴することができました。私はこれを機会に当研究所ならびに附属医院の医師・医療スタッフが総力を結集して、糖尿病診療と療養指導に関する本を出版することを企画いたしました。
 「第60回日本糖尿病学会年次学術集会」(会長:中村二郎先生、2017年5月18-20日、於:名古屋国際会議場)を目前にひかえて、このほど『これが知りたかった!糖尿病診療・療養指導Q&A』を上梓することができました。本書の表紙を下に掲載させていただきます。

本書の内容と監修者としての願い

 本書には、多職種からなる当院の医療スタッフが臨床に役立てる視点にたって厳選した150余のQ(質問)に対するA(回答)は、当院での豊富な臨床経験と研鑽の中で積み重ねてきたものをベースに、主として当院の医師と医療スタッフが協力して執筆いたしました。
 本書が、糖尿病とともに生きる患者さんを支えて診療や療養指導にあたっています医師や医療スタッフの方々に役立てていただけることを願っています。

表紙画像 監修:岩本安彦  編集:吉田洋子  出版:中山書店

日本糖尿病学会で研究成果を発表

 ”糖尿病学の夢の実現へ:未来への架け橋”をメインテーマに「第60回日本糖尿病学会年次学術集会」が名古屋で開催されます(概要上述)。
 朝日生命成人病研究所からは、シンポジウム 特別発言 1題、ディベートセッション 1題、一般演題 13題(口演 5題、ポスター 8題)を発表します。(発表予定者一覧は <こちら>からPDFでご覧いただけます。)

日本人は糖尿病になりやすい?

治験部長・糖尿病代謝科 大西 由希子

 「日本人は、糖尿病になりやすい人種か?」「自分は日本人だから糖尿病になったのか?」と考えたことはありますか?日本に住んで、主に日本人を診療しているとそのような疑問はあまりわいてきませんし、患者さんもほとんど日本人しかいない糖尿病診療の待合室では違和感なく糖尿病の診療をお受けになっていると思います。

アジア人と白人を比べると

 アメリカの糖尿病の教科書には、「アジア人は白人よりも糖尿病になりやすい」と書いてあります。白人のBody mass index (BMI ※) 30 とアジア人のBMI 25は同じくらいの糖尿病リスクになる、という報告があるからです。たとえば、身長は同じ170センチの人でも白人で体重が87キロの人と、アジア人で72キロの人とで、糖尿病発症リスクが同じだ、ということです。体重は随分違うのに、このアジア人と白人の糖尿病の発症リスクは同じになってしまうのです。
 なぜこのような違いが生じるのでしょうか。白人の肌の色が白く、日本人の肌は少し黄色がかっている、という違いがあるように、膵臓から出るインスリンという血糖値を下げるホルモンの分泌力にも人種差があり、白人のほうがアジア人よりインスリンの分泌力が高いから、と考えられています。
※(注1)BMI:体重と身長の関係から算出される、ヒトの肥満度を表す体格指数。
BMI=体重(kg)÷(身長(m)の2乗)

 食べすぎや運動不足で体脂肪が増えると、インスリンの効果が悪くなり血糖値が高くなりやすくなります。それをインスリン抵抗性、とよびます。つまり、肥満になるとインスリン抵抗性が高くなり、血糖値が上昇しやすくなるのです。そこで、インスリン抵抗性を補うようにインスリン分泌を亢進させれば、血糖値は正常値を保つことができます。どこまで太っても大丈夫かは、個人差も大きいですが、人種差もあることが興味深いですね。

日本人と日系アメリカ人の比較研究

 さて、では人種として白人より糖尿病になりやすいアジア人がアメリカに移住するとどうなるでしょう。生活習慣が白人と似てくると、肥満度の高い人が増えます。そしてその結果と考えられますが、日系アメリカ人は日本人と比較して糖尿病発症率が高いと報告されています。私達の調査結果によると日本人男性と日系アメリカ人男性では、明らかにBMI、食事摂取カロリー、動物性脂肪摂取量は日系アメリカ人のほうが高いです。そして、インスリン抵抗性も日系アメリカ人で多いことが分かりました。
 日本人と日系アメリカ人とは、遺伝子の組み合わせこそ同じ「日本人」のルーツを持ちますが、日系2世、3世となると胎内に始まり生まれてからずっと、欧米化された環境で育ったことになります。遺伝子の組み合わせと胎内環境と、生後の食生活や運動習慣など、多くの要因が複雑に影響しあいながら糖尿病がなぜ発症するのか。とても興味深い研究だと思い、「日系アメリカ人と日本人の糖尿病比較」をテーマとして研究を続けています。

※編集部注:大西由希子医師がWEBマガジン「エピロギ」(運営:株式会社メディウェル)にインタビュー記事で取り上げられました。上述の研究テーマについても後編で触れられています。
  『育児の経験は医師としての自分を育てる糧になる。』
    【前編 ~3人の子どもを育てながら臨床・研究の現場で働く~】(2017.02.21付)
    【後編 ~問題は抱え込まず、客観視して解決していく~】(2017.02.23付)

食事療法を継続するには

栄養管理室 越野 彩

糖尿病食は健康食

 糖尿病食は特別な食事ではなく「健康食」であると、成人病News Vol.3(2016年1・2月号)でご案内しました。糖尿病だからといって絶対に食べていけないというものはありません。量やバランスを考えて、食事をすることが大切です。糖尿病のコントロールを良くするためには、食事療法と運動療法が欠かせません。
 しかし、「わかっているけどできないよ」「意識すればいいんだけど、なかなかね…」という声をよく耳にします。

実行・継続可能な目標設定を

 食事は毎日のことなので、食事療法が負担となってしまっては継続が難しくなります。
 生活パターン・家庭環境(家族構成、家族のサポートはあるかなど)・仕事環境など患者さんの置かれている環境や、食事に対する考え方は様々で、できることは人それぞれ異なります。そのため、こうしたらいいという正解はなく、1人1人にあわせて考えていくことになります。
 栄養指導では、「こうしてください」と一方的に押し付けるようなことはせずに、まずは患者さんの話を聞き、これからどうしていきたいか、できることはないかを一緒に考えています。目標設定は、「食事量に気を付ける」といった漠然としたものではなく、「大盛りやおかわりをしない」「よくかんでゆっくり食べる」など、患者さんがこれなら取り組めそうと思える実行可能なことにします。実行できたことは称賛して継続してもらい、次は何に取り組むかをまた考えていきます。継続することが大切ですので、無理せず続けられそうなことに取り組み、習慣化させます。
 成功体験を積み重ねることでモチベーションの維持ができ、前向きに取り組めるようになります。

わかっているけどやめられないこと(嗜好品について)

 わかっているけどやめられないことのひとつに、嗜好品(アルコールや菓子類)があります。やめることのメリットをお話しすると、パタッとやめられる人もいますが、なかなかやめられない人の方が多いように感じます。嗜好品は、好きで飲んだり食べたりしている人もいれば、ストレス解消のために飲み食いしている人もいるため、摂取したい気持ちを汲み取ることも必要です。
 やめられない場合は、まずは量や頻度を減らすように話しています。
   「甘いものはやめられないけど夕食後に食べることはやめられそう」
   「お酒を飲む量は減らせないけど休肝日を作れそう」
   「お酒の量もだけどつまみの内容を見直してみる」
などなど。患者さんができそうと思ったことに取り組んでもらいます。1~2か月後の栄養指導で確認をすると、うまく取り組めている場合には数値も改善していて、モチベーションアップにつながります。
 ただし数値が良くなったからといって、安心して飲み過ぎ・食べ過ぎにならないように気をつけてください。また、イベントの時などに暴飲暴食してしまった…ということがあるかと思いますが、その経験を生かし、今後上手につきあうにはどうしたらいいのかを考えましょう。

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