vol.011 2017年 5・6月
朝日生命成人病研究所の医師・医療スタッフが総力を結集した |
(公財)朝日生命成人病研究所附属医院 所長・院長 岩本 安彦 |
本書出版のきっかけ 朝日生命成人病研究所は1960年の開設以来、成人病とくに糖尿病の診療と研究に力を注いできました。昨年10月、長年にわたる糖尿病診療と療養指導への貢献が高く評価され、「第9回糖尿病療養指導 鈴木万平賞」受賞の栄誉に浴することができました。私はこれを機会に当研究所ならびに附属医院の医師・医療スタッフが総力を結集して、糖尿病診療と療養指導に関する本を出版することを企画いたしました。 本書の内容と監修者としての願い 本書には、多職種からなる当院の医療スタッフが臨床に役立てる視点にたって厳選した150余のQ(質問)に対するA(回答)は、当院での豊富な臨床経験と研鑽の中で積み重ねてきたものをベースに、主として当院の医師と医療スタッフが協力して執筆いたしました。 監修:岩本安彦 編集:吉田洋子 出版:中山書店 日本糖尿病学会で研究成果を発表 ”糖尿病学の夢の実現へ:未来への架け橋”をメインテーマに「第60回日本糖尿病学会年次学術集会」が名古屋で開催されます(概要上述)。 |
日本人は糖尿病になりやすい? |
治験部長・糖尿病代謝科 大西 由希子 |
「日本人は、糖尿病になりやすい人種か?」「自分は日本人だから糖尿病になったのか?」と考えたことはありますか?日本に住んで、主に日本人を診療しているとそのような疑問はあまりわいてきませんし、患者さんもほとんど日本人しかいない糖尿病診療の待合室では違和感なく糖尿病の診療をお受けになっていると思います。 アジア人と白人を比べると アメリカの糖尿病の教科書には、「アジア人は白人よりも糖尿病になりやすい」と書いてあります。白人のBody mass index (BMI ※) 30 とアジア人のBMI 25は同じくらいの糖尿病リスクになる、という報告があるからです。たとえば、身長は同じ170センチの人でも白人で体重が87キロの人と、アジア人で72キロの人とで、糖尿病発症リスクが同じだ、ということです。体重は随分違うのに、このアジア人と白人の糖尿病の発症リスクは同じになってしまうのです。 日本人と日系アメリカ人の比較研究 さて、では人種として白人より糖尿病になりやすいアジア人がアメリカに移住するとどうなるでしょう。生活習慣が白人と似てくると、肥満度の高い人が増えます。そしてその結果と考えられますが、日系アメリカ人は日本人と比較して糖尿病発症率が高いと報告されています。私達の調査結果によると日本人男性と日系アメリカ人男性では、明らかにBMI、食事摂取カロリー、動物性脂肪摂取量は日系アメリカ人のほうが高いです。そして、インスリン抵抗性も日系アメリカ人で多いことが分かりました。 ※編集部注:大西由希子医師がWEBマガジン「エピロギ」(運営:株式会社メディウェル)にインタビュー記事で取り上げられました。上述の研究テーマについても後編で触れられています。 |
食事療法を継続するには |
栄養管理室 越野 彩 |
糖尿病食は健康食 糖尿病食は特別な食事ではなく「健康食」であると、成人病News Vol.3(2016年1・2月号)でご案内しました。糖尿病だからといって絶対に食べていけないというものはありません。量やバランスを考えて、食事をすることが大切です。糖尿病のコントロールを良くするためには、食事療法と運動療法が欠かせません。 実行・継続可能な目標設定を 食事は毎日のことなので、食事療法が負担となってしまっては継続が難しくなります。 わかっているけどやめられないこと(嗜好品について) わかっているけどやめられないことのひとつに、嗜好品(アルコールや菓子類)があります。やめることのメリットをお話しすると、パタッとやめられる人もいますが、なかなかやめられない人の方が多いように感じます。嗜好品は、好きで飲んだり食べたりしている人もいれば、ストレス解消のために飲み食いしている人もいるため、摂取したい気持ちを汲み取ることも必要です。 |