vol.018 2019年 1・2・3月
糖尿病食事療法の“個別化”に向けて |
(公財)朝日生命成人病研究所附属医院 所長・院長 春日 雅人 |
標準体重と総エネルギー摂取量の算定方法への疑問新年おめでとうございます。 昨年の11月5日に、日本糖尿病学会が食事療法に関するシンポジウム「再び日本人にふさわしい糖尿病食事療法を考える」を開催しました。このシンポジウムで注目されたのは現行の食事療法における標準体重と総エネルギー摂取量の算定方法に疑問が提示された点でした。 “個別化”に向けての道筋 ではどのような代替案があるのでしょうか? 肥満で2型糖尿病の患者さんでは、まずその患者さんの摂取されている食事を詳しく1週間程度記載して頂き、これを基に1日の摂取カロリーを計算する。このような患者さんでは、まず5%の減量がコンセンサスですので、それを3~6ヵ月で達成するには1日何カロリー減らせばよいか計算して、それを現在の摂取カロリーから減じたカロリーを総エネルギー摂取量とするというのがひとつの案として考えられ、米国などで行われている減量を伴う臨床研究ではこのような方法がとられることが多いようです。 |
FreeStyleリブレ / FreeStyleリブレProについて
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糖尿病代謝科 震明 あすか |
はじめに 治療や生活スタイルの違う糖尿病患者さんには、それぞれの血糖変動パターンがあります。受診日の血糖値やHbA1cで血糖変動を予想するのは難しく、食後の高血糖や自覚症状のない低血糖が潜んでいる可能性があります。 FreeStyleリブレとは 基本的にインスリン、低血糖を起こす可能性のある一部の飲み薬を使用している患者に装着します。 リブレの種類 見た目はそっくりですが、用途に合わせて2種類のリブレがあります。Readerの色が異なります。
出典:アボット社公式HPより引用 当院では、FreeStyleリブレ/リブレProいずれも運用しています。 FreeStyleリブレProを利用した当院での研究 当院に糖尿病教育入院をした患者さん38名の協力を得て、FreeStyleリブレProを用いて退院前後の血糖変動を観察する研究を行いました。 |
治験とCRC |
CRC室 チーフ 泉澤 恭子 |
薬が生まれるまで 私達は病気になると薬を飲んで回復を待ちます。人間には自然治癒力があって自ら病気と闘う力がありますが限界があります。薬は一緒に病気と闘ってくれる頼りになる存在です。
動物と人間とでは体の仕組みが違うので、動物での結果をそのまま人に当てはめることはできません。今の科学では、どうしても人での試験が新薬の誕生には必要なのです。 CRCをご存知ですか? CRC(Clinical research coordinator)というのは治験コーディネータ―の略称で、20年ほど前に誕生した新しい医療職種です。欧米ではスタディコーディネーターと呼ばれ日本より長い歴史があります。病院で働くスタッフの中でCRCは新しい職種なのでまだ一般には知られていませんが、今や「治験」を牽引するなくてはならない存在です。CRCの業務は多岐にわたり、医療職と事務職の両方の能力が必要とされます。かつて「治験」の空洞化と言われ我が国が先進国の医薬品開発から乗り遅れ、他国で使われている優れた薬が使えないということがありました。この理由の一つとして、日々の診療業務に追われる多忙な医師に任せきりで「治験」がいっこうに進まないということがあったのです。新しい治験を実施する法律(GCP)が制定されたのをきっかけに政府も打開策を考え、CRCが誕生したのです。 |